誰しも加齢とともに髪の毛は薄くなりますが、遺伝やホルモンが原因で生じる男性型脱毛症に悩まされる方も多いのではないでしょうか。
男性型脱毛症はAGAとも呼ばれ、日本人男性の約3割が生じるともされています。
なぜ脱毛が生じるのか、その対策はどうすれば良いのか、化学的な観点から解説します。
1.毛髪の成長サイクルと脱毛について
なぜ毛が抜けるのかについて知るため、まず毛周期について解説したいと思います。
人の毛は成長と退縮を繰り返す、毛周期と呼ばれるサイクルを持っています。
このサイクルには三つの種類があり、それぞれ細胞分裂が活発な成長期、細胞分裂が停止し細胞が死滅する退行期、成長期の前段階である休止期です。
髪の毛に占める割合としては85-95%が成長期、退行期が1%、休止期が10%程度です。
また期間も異なり、成長期が2-6年、退行期が2-3週、休止期が3ヶ月程度となっています。
このうち成長期が短縮してしまうことが薄毛(AGA)の原因となるのです。
AGAでは成長期の長さが数ヶ月から一年に短縮してしまうため、十分に太い毛を形成できなくなり、髪の毛が細く柔らかくなってしまいます。
この軟毛化した状態で成長期を終え、退行期、休止期、そして次の成長期へと移行するわけですが、その過程で細く柔らかい毛は抜け落ちてしまうのです。
ちなみに成長期毛の割合は春に多く、秋に少ない傾向にあります。秋頃に抜け毛が増えるのは、科学的に正しいことだったのです。
2.薄毛(男性型脱毛症・AGA)のメカニズム
薄毛の原因となる男性型脱毛症(AGA)は、“遺伝”と”ホルモン”が大きな要因です。
男性型脱毛症はAGAと呼ばれますが、これは”Androgenetic alopecia”の略で、意味としては”男性ホルモン(Andro)と遺伝(genetic)によって生じる脱毛症(alopecia)”です。
薄毛に男性ホルモンが寄与していることは古くから知られており、紀元前のギリシャではアリストテレスが、睾丸を除去した宦官にはAGAが生じていないと記録しているそうです。
また遺伝の影響についても考察されており、アメリカのハミルトニアンは、男性ホルモンを投与するとAGAが発症する家系と、発症しない家系が存在することを見出しています。
ではなぜ男性ホルモンと遺伝子が薄毛に関与しているのでしょう。
近年は、男性ホルモンであるテストステロンが関与していると考えられています。
このテストステロン、実は弱い男性ホルモンなのですが、5α還元酵素の働きにより、強力なDHT(ダイハイドロテストステロン)に変化します。
DHTは毛細胞内のアンドロゲン受容体と結合し、DHTとアンドロゲン受容体結合体を形成します。
DHTとアンドロゲン受容体結合体は二量体を形成し細胞核内に侵入、DNAと結合することでタンパク質の生成を促します。
このとき生成されたタンパク質が、毛周期に影響を与えて成長期を短縮し、AGAが進行すると考えられています。
最近はプロスタグランジンD2というホルモンもAGAに影響していることが示唆されています。
3.発毛剤と育毛剤は違う!?AGAの治療方法について
現在市場では様々な育毛剤や発毛剤が販売されています。
ここで注意したいのが育毛剤や発毛剤は別物であり、症状に応じて使い分ける必要がある点です。
育毛剤は医薬部外品であり、頭皮環境の改善や血行促進などにより脱毛を防ぐものとなります。
アンファー株式会社より発売されているスカルプDなどは育毛剤であり、医師への相談なく購入できる点が利点です。
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一方発毛剤は医薬品に分類され、有効成分が作用することで発毛を促します。発毛剤は男性型脱毛症(AGA)の治療薬となるため、AGAの方が対象となります。
男性型脱毛症の治療方法として推奨されている発毛剤には、大きく分けて2種類あります。一つは内服薬であるフィナステリド、もう一つはミノキシジルローションです。
それぞれの作用メカニズムについて見て行きましょう。
内服薬フィナステリド
フィナステリドはAGAの治療薬として、医師から一般的に処方される医療用医薬品です。
したがって、一般的には医師の診断が必要となります。
先ほども述べたとおり、男性ホルモンであるテストステロンが5α還元酵素の働きにより、強力なDHT(ダイハイドロテストステロン)に変化することがAGAのきっかけです。
フィナステリドは5α還元酵素の阻害剤であり、テストステロンと5α還元酵素を奪い合う形で、毛の成長を阻害するDHTの生成を抑制します。
したがってAGAとは要因が異なる円形脱毛症や女性の服用は効果がないとされています。
特に妊婦が飲むことは非常に危険とされており、胎児が男の子の場合は外性器に異常をきたしてしまう可能性があります。
また内服薬ですが即効性のある薬ではありませんので、見かけ上の効果が現れるまでには通常6ヶ月程度の投与が必要です。
ミノキシジルローション
ミノキシジルローションは、外用発毛剤として臨床試験で優れた効果が示されています。
ミノキシジルは一般医薬品であるため薬局やドラッグストアでも購入が可能であり、ミノキシジルを配合した商品では大正製薬株式会社のリアップシリーズが有名です。
もともとミノキシジルは血管拡張作用を有する経口降圧剤として使用されていましたが、副作用として全身の多毛が見られたことから、発毛剤として開発が進められました。
ホルモンによる毛の軟毛化が脱毛の要因と述べましたが、ミノキシジルは毛包を大きく成長させるとともに、毛を太く成長させることで脱毛を抑制します。
VEGFと呼ばれる成長維持因子を毛乳頭から産出させて、その効果を発揮させていることが知られていますが、詳しいメカニズムはまだわかっていないようです。
フィナステリドとは異なる作用機構ですので、男性の場合はミノキシジルとフィナステリドを併用することで効果は相加的だそうです。
またミノキシジルの利点は女性も使用可能な点であり、男性用には5%、女性用には1%のローションが販売されています。
使用後数ヶ月で効果が現れ始めるため、少なくとも4ヶ月は継続使用が求められます。
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4.まとめ
薄毛のメカニズムについて、参考になりましたでしょうか。
薄毛が気になり始めた方は、市販の育毛剤や育毛シャンプーなどを使い、頭皮環境を整えるところから始めるのが良いのではないでしょうか。
一方でAGAの場合は遺伝子とホルモンが脱毛の原因ですので、発毛剤を使用する必要があります。
手軽に購入できるリアップ等のミノキシジルローションの利用や、程度によってはクリニックへ相談することがオススメです。
管理人はリアップを使用しています。育毛には費用がかかりますが、髪の毛はプライスレスだと考えています。