このタイトル、資産運用について勉強しようと思っている方は聞き覚えがあるのではないでしょうか。
実は「金持ち父さん貧乏父さん」のオマージュで、「金持ち父さん貧乏父さん」は世界中で約3000万部、日本でも300万部以上売れたロングセラー本です。
資産運用により経済的な自由を手に入れる方法について記したこの本ですが、実はその考え方は研究活動にも応用できます。
「金持ち父さん貧乏父さん」では、"お金"や"不動産"といった資産運用の方法について解説していますが、
この考え方をもとに、われわれ研究者にとっての資産である"知識"や"経験"を高める方法について考察したいと思います。
【目標】ラットレースから抜け出せ
「金持ち父さん貧乏父さん」における大きなテーマが、"ラットレース(イタチごっこ)"からの脱却です。
まずこのラットレースについて解説します。
"貧乏父さん"は優秀で勤勉、収入もありましたが、その暮らしは豊かとは言えませんでした。
一生懸命働くことで昇進し給料が増えても、同時に税金や住宅ローンといった負債も増やしているため、毎日が支払いで一杯一杯だったのです。
「金持ち父さん貧乏父さん」では、このように収入とともに支出が増えることで永遠に豊かにならない状況を"ラットレース"と呼んでいます。
ラットレースから抜け出し、経済的な自由を手に入れる方法が本書の内容です。
このラットレースのような状況は、お金に限らず、われわれ研究者の研究活動にも当てはまるのではないでしょうか。
つまり私たちは毎日"時間"という収入を得ており、そのうちの一部を支払って実験などのタスクをこなし成果を得ていると考えます。
そして年次を重ねる中で求められる成果の質や量も増え、タスクに費やす"時間"はどんどん多くなってしまいます。その結果、勉強といった自分自身に費やす時間が残ってない人が多いのではないでしょうか。
さらに多くの人は、時間を浪費する"負債"も抱えていることがこの傾向に拍車をかけています。
過剰なSNSやゲーム、精度の低い実験や作業性の悪い残業など、時間を浪費するものに貴重な時間を割いてしまうため、自己投資にかける時間がなくなってしまっているのです。
このようなタスクに追われ続けて能動的な学びが得られない状況は、ラットレースと言えるのではないでしょうか。
与えられたタスクをこなすだけでは、こなした分の成果しか生まれません。研究者として伸びるためには、目的に応じて能動的に学びを得る必要があります。
この学びの少ないラットレースから抜け出すことこそが、伸びる研究員の秘訣となります。
受動的にタスクをこなすだけでは、学びはどんどん少なくなります。
【手法】リテラシーを持て
「金持ち父さん貧乏父さん」では、ラットレースから脱却するためお金について勉強することを進めています。
特に資産と負債について知ることを提案しています。
ここでいう資産は、自身に利益をもたらすビジネスや不動産、株などを指しています。負債は自身のお金を減らすものを指しており、住宅ローンやクレジットカードの未払い分などです。
"貧乏父さん"をはじめ多くの人々は、お金を使って資産ではなく、負債である家や車を買っているため、豊かにならないと本書では説いています。
"金持ち父さん"に言わせれば、お金を産まない家は負債でしかないため、家ではなく資産となりうるビジネスにお金を使うのです。
では研究活動におけるラットレースから抜け出すためには、どうすれば良いのでしょうか。
これについても本書と同様に、何が自分にとっての資産(自身に利益をもたらすもの)で何が負債(時間を浪費するもの)かを整理することが重要と考えます。
当然ですが、自身にとって負債となるものは極力減らし、増やさないようにすることが求められます。
次に資産を増やす必要がありますが、研究者にとっての資産は何でしょうか。これは将来的に自身に利益をもたらすプラスαの"知識"や"経験"ではないでしょうか。
研究者であれば論文や特許調査により得られる周辺知識、実験の効率化、英語の勉強、セミナーへの参加など、就活生であればインターンなどで得られる経験も資産になります。
まず自身にとっての負債を整理して時間を捻出し、資産を増やすために自身に時間を投資することが第一段階となります。
そして資産である"知識"や"経験"を増やせば、作業効率の向上や実験の効率化、ミス・ロスの減少により資産である時間を産み出すこともできますし、新規性の高いテーマ・手法の提案といった新たな資産も創造できます。
このように資産は資産を生むため、お金持ちはどんどんお金持ちになるように、伸びる人はどんどん伸びていきます。
この伸びるサイクルを作ることが、第二段階となります。では具体的にどうすれば良いのか、次ページで解説します。
自己成長には学びがかかせませんが、継続して学びを得るには時間の管理が必要不可欠です。