2021年12月に公表された三菱ケミカルHDの石化・炭素事業の切り離しは記憶に新しいと思います。
実はギルソン社長による改革はまだ続いており、従来の持株会社経営に切り込む会社の構造改革にも踏み込んでいるのです。
将来的には三菱ケミカルHDの社名も変わると予想されます、今回はこの構造改革について解説します。
三菱ケミカルHDのギルソン改革
三菱ケミカルHDでは、2021年4月1日付でジョンマーク・ギルソン氏が社長に就任しています。
初の外国人トップであるギルソン氏は、就任会見で事業ポートフォリオの改革も述べており、”脱炭素の流れと合致しているか”が事業継続の判断材料になると言います。
というのも三菱ケミカルHDは社会の潮流や技術動向を見据えて2050年のあるべき姿を掲げており、ポートフォリオ再編における事業評価のポイントの一つが低炭素社会と適合しているか否かとなっているのです。
これまでも石化事業の切り離しや、アルミナ繊維の売却など環境貢献を意識した成長戦略のもとにポートフォリオ改革を断行してきました。
詳しくは下記記事にまとめていますので、ご覧ください。
しかしギルソン改革はこれで終わりではなく、会社の構造改革にも踏み込んでいるのです。
会社の立て直しのため、様々な改革を断行していますね。
持株会社経営にも区切りを
ギルソン社長は会社の構造改革にも言及しており、現在の持株会社経営を見直す考えも明らかにしています。
そもそも三菱ケミカルHDは持株会社であり、下記四つの事業会社とそのグループ会社で構成されています。
・三菱ケミカル
・田辺三菱製薬
・生命科学インステイテュート
・日本酸素ホールディングス株式会社
三菱ケミカルHDはこれら事業会社の親会社として、事業方針を掲げているのです。
三菱ケミカルHDの持株会社経営は2005年、三菱化学と三菱ウェルファーマが統合して発足した際から導入されており、その後も日本酵素HDなどの買収や化学三社を統合するなどして、世界の競合にも劣らない巨大企業となりました。
持株会社経営を進める企業は他にも旭化成や花王が有名ですね。
持株会社経営の化学メーカー
・旭化成グループ
・花王グループ
・東洋インキSCホールディングス
・富士フィルムホールディングス
・三菱ケミカルHDなど
しかしギルソン社長はこれまでの持株会社経営にも区切りをつけるとしているのです。
三菱ケミカルHDにとって、大きな方向転換となります。
持株会社経営を見直す理由とは
でも、どうしてこれまでの拡大路線に見切りをつけたの?
三菱ケミカルHDはこれまでの買収や設備投資に3兆円を費やしましたが、利益成長には繋がらず、負債ばかりが増えたとされています。
というのも、このようなM&A時には買収によって生まれるシナジーやブランド力に応じて 時価総額(市場価値)以上の買収プレミアムが上乗せされます。
通常このプレミア分は人員削減や合理化により利益を捻出する必要がありますが、三菱ケミカルHDはそのようなことを行わなかったのです。
さらにM&Aにより事業は多角化しましたが、事業間のシナジーは少なく、資金の回収につながるような利益成長もありませんでした。
最近日立化成を買収した昭和電工では成長領域に絞り、他事業の売却を進めていました。
また従来の持株会社経営では構造が複雑で、責任の所在が不明瞭になることも課題にあげています。
一般的に持株会社経営では、様々な取り決めにおいて、子会社の一存で決定できないことが増えてしまいます。
重要な決定の場合は全て、親会社にお伺いを立てなければなりません。そのため、スムーズに連携をとれない場合は経営が滞ってしまったり、責任の所在が不明瞭になることがあるのです。
持株会社経営の欠点が出始めていたのです。
社名も変わる?これからの三菱ケミカルHD
そこでギルソン社長は、「ワンカンパニー、ワンマネジメントチーム」とするとし、新組織では「マネジメントチームが、取締役会や株主に対しても100%の直接責任をもつ体制にする」と話しています。
下記に新体制の組織図を載せますが、各会社が事業ごとに統合され、また社員にはこれまでの三菱ケミカルや田辺三菱製薬などの呼称は使わないで欲しいともコメントしています。
これまでのギルソン改革の狙いはなんなの?
ギルソン社長は会社の立て直し、価値向上を目標としており、EBITDAマージン20%と成長路線への回帰を達成するとしています。
今回の改革による事業売却等により約5000億円の負債を減らすとともに、三菱ケミカルHDの社名を変え、持株会社経営にも区切りをつける方針です。
2022年にも新組織体制が動き出すと予想されます。