今回は、注目度が高まっている化学メーカーを紹介します。
まずは9月に株式分割を行う企業。
そうそう、君こそ分割して欲しかったんだよ。
と言う企業がたくさんありましたので、ご紹介します。
株式分割する銘柄
日東電工とデクセリアルズ
まずはお求めやすくなった高利益企業、日東電工とデクセリアルズ。
両社ディスプレイ材料を得意とする化学メーカーで、その特徴は利益率の高さ。
日東電工は売上高9000億円に対して利益率15.2%、デクセリアルズは売上高1000億円に対して利益率は31.8%、
化学メーカーの中でもトップクラスに利益率の高い企業ですね。
これまでの成長性の高さも相まって、投資家からの注目度も高い企業ではないでしょうか。
ただ問題点は、とにかく値が張る、ということ。
日東電工なんかは1株当たりの株価が高いことでおなじみで、100株買うにはなんと100万円くらい、
デクセリアルズも最近は値を上げているので、100株当たり60円万くらいします。
スイカでいえばひと玉単位でしか売っていないような状況で、
いくら好きでもひと玉は食べきれない、カブトムシじゃねえんだぞ、といった感じでした。
そんな、まさしく高値の花であった2社ですが、9月末に株式分割を行い、
分割後は100株当たり20万円程度と、かなり手を出しやすくなったのではないでしょうか。
買いやすくなったとはいえ、大事なのは企業業績やろがい、
と言うことで、業績をみると、足元では両社ともに好調です。
デクセリアルズは有機ELシフトを追い風に、粒子整列型ACFが大きく伸びており、
日東電工も、HDD向けの精密回路付き薄膜金属ベース基板がAI需要で上振れ、なんと1Qで上方修正を決めています。
事業内容を聞いても、なるほど、分からん、という方が多いかと思いますが、
それもそのはずで、両社の強みはニッチ戦略。
日東電工はグローバルニッチトップ戦略を掲げ、デクセリアルズも技術トレンドを先回りした製品開発に定評があります。
ニッチトップな製品は参入障壁の大きさなどから、利益率が高い傾向にあるわけですね。
ただ両社円安メリットも大きく、特に日東電工は想定為替レートが高く、その点は注意しましょう。
なおデクセリアルズは去年の隠れ優良企業の動画でも紹介しており、
その時株価は2000円台だったため、ダブルバガーは達成しています。
ホールドしておけばよかった。
日本曹達と大阪ソーダ
続いては、分割で手を出しやすくなるも、注意点もある企業。日本曹達と大阪ソーダ。
実は投資界隈で注目度の高い2社ですが、そのポイントは全く異なり、
言ってしまえばインカム(配当)の日本曹達、キャピタルの大阪ソーダ、でしょうか。
まず日本曹達は配当利回りが5%近くあり、さらに10年以上非減配の高配当銘柄です。
ちなみに日本曹達は9月30日が権利日、これはテストでも頻出なので覚えておきましょう。
対して大阪ソーダは、株価チャートをみると一目瞭然。
2023年には3000円台であった株価が、2024年には12000円をタッチ、
短期間で株価が数倍となっており、とんでもない値動きをしていますね。
このように攻めの大阪ソーダ、守りの日本曹達ともいえる2社ですが、この違いは事業内容にあります。
どちらも名前にソーダがつくから、似たような事業構成じゃないの、とも思うかもしれません。
確かに両社ソーダ製品を祖業としていますが、現在では全く違う進化を遂げているのです。
例えば大阪ソーダは、独自のチェーンから高シェアな製品群をラインナップしており、
中でも注目度の高い製品は、おそらく肥満薬向けのシリカゲル。
カラムクロマトは、みなさまもスープのアクや油分を取り除くのによく使っているかと思いますが、
大阪ソーダは肥満薬の精製過程で用いられる、シリカゲルでトップシェアとなります。
肥満薬はその高い成長性から注目度が高く、大阪ソーダも期待値が高まったとみられるのです。
対して日本曹達は農薬、半導体材料や医薬品添加剤などの化学品を得意とし、
堅実な利益成長を続けてきた経緯が、安定配当につながっているとみられます。
これら2社は今回の株式分割により、株価は2000円前後と手を出しやすくなります。
ただ大阪ソーダも日本曹達も、買い時は難しいところもあるのです。
大阪ソーダの肥満薬関連は当たれば大きそうですが、こういった類は期待や思惑段階の方が株価が変動しやすい傾向にあります。
また日本農薬は、農薬の減速から足元では停滞を余儀なくされ、株価も軟調です。
配当は維持しているものの、中長期的な成長に向けては、新規農薬3剤に加え、
半導体材料や医薬品添加剤の増強といった、投資成果の刈り取りが進むかがポイントとなりそうですね。
明暗分かれる半導体銘柄
続いては、明暗が分かれつつある半導体関連メーカーについて。
株式市場全体では行き過ぎたAIへの過熱感などから、手を出しがたい相場が続いており、
半導体材料を手掛ける化学メーカーも苦戦を強いられています。
ただシリコンウエハー専業のSUMCOは依然として低調も、
後工程に強みをもつレゾナックは今週急速に戻すなど、足元の戻りには差が出始めています。
レゾナックは黒鉛電極の値上げが好材料だった面もありますが、半導体業界は好不況が入り交ざるまだら模様、
実は苦戦するメーカーと、上方修正が期待されるメーカーが同居するなど、
企業の成長性にも差が出てくる可能性がありますので、解説していきます。
苦戦が続くメーカー
まず、苦戦が続く半導体材料メーカー。
その前に今の半導体業界についておさらいしておきます。
最近はAI半導体に注目が集まっていますが、そもそも半導体のボリュームゾーンはスマホやパソコンとなります。
そしてこれら電子機器の回復は想定より遅れており、さらにEVの減速から、車載向け半導体も低調、
つまり半導体市場全体的でみれば、力強さに欠けると言えます。
こうした需給の影響を受け、苦戦しているのがシリコンウエハー。
シリコンウエハーは先端品を中心に長期契約、またほかの半導体材料と比べ長期在庫ができてしまうので、
長らく続く半導体市場の調整局面から、シリコンウエハーの在庫水準は高まっていました。
そして半導体市場回復の遅れから、在庫水準は緩やかにしか下がっていないとみられます。
ゆえにシリコンウエハーを手掛けるSUMCO、また信越化学の評価が軟調とみられます。
さすがに25年ごろには、半導体市場が回復するとされており、再びサイクルが来れば復活するものと期待されます。
ただ在庫が適正水準となるまでは、辛抱の時間が続くのかもしれません。
戻してきている化学メーカー
そのような中、現状はAI半導体の独り勝ちです。
具体的にはNVIDIAのAI半導体、それを受託するTSMC、GPU周辺のHBMを供給するSKハイニックらが、半導体業界の勝ち組とされています。
そして材料メーカーも一部堅調で、東京応化や日東電工らは、AI関連需要の強さから上期予想を上方修正しています。
今後もAI半導体の流れが続くのであれば、通期予想を上方修正する企業も出てくるかもしれません。
ということで、AI特需が期待される化学メーカーを妄想すると、半導体材料では後工程のパッケージ技術や、また米国展開がカギを握ると考えられます。
というのも、膨大なデータ処理が求められるAI半導体には後工程のパッケージ技術が欠かせず、
さらに昨今はgoogleやamazonといった大手企業が、AI半導体の独自開発に着手する動きがみられます。
このようなトレンドに目をつけているのがレゾナックです。
レゾナックは後工程材料で幅広いラインナップを持ち、GAFAMといった先端パッケージのコンセプトリーダーに近接するべく、
半導体設計の中心地としても重要な役割を果たすシリコンバレーに研究開発拠点を構え、情報収集を進めています。
ほかにも研削用テープを手掛けるリンテック、超純過酸化水素で世界首位の三菱ガス化学、
また汎用チップからカスタムチップへの移行が広がれば、フォトマスク需要などにも波及が期待されるのではないでしょうか。
このように半導体も需要先により濃淡が出てきているため、銘柄も中身を見る必要が出てくると思われます。
まとめ
最後に、化学メーカーの株式分割とかけて、需給が悪化するナフサクラッカーと解きました。
その心は、どちらも分解するだけでなく、事業そのものの価値向上が重要、と言う話です。
株式分割は目を引きますが、やはり企業の本質的な価値には注目していきたいですね。
また半導体関連は明暗が分かれつつあり、モメンタムから見落とされている企業もあるかもしれません。
ただ株式相場ではトレンドに抗わない方が良いとも思うので、その方向性には注意しましょう。
それでは皆様、ご安全に。