トランプ大統領が再び大統領の座に就き、新政権がスタートしました。
大統領令を次々と署名し、自己主義的な政策を進める中で、国内外に多くの影響を与えています。
その中でも、エネルギー政策や貿易政策の変化が注目され、化学業界にも少なからず影響を与えそうです。
特に、脱炭素政策の後退や関税の行方が、化学メーカーにとって重要な課題となるでしょう。今回は、こうした新しい政策が化学メーカーにどんな影響を与えるのか、見ていきたいと思います。
パリ協定とエネルギー政策
絶望的なのはパリ協定。トランプさんはぼったくりと批判し、パリ協定からの離脱を命じています。
早ければ26年から離脱可能とのことで、アメリカの離脱期間は3年以上に及びます。
もともとパリ協定では南北問題が顕著になっていましたが、今回のアメリカの離脱が追い打ちをかける形で、事実上の消滅となりかねませんね。
で、トランプさんは脱炭素からは逆行し、化石燃料の生産底上げを目指しています。
これは自国利益に加えてインフレを抑え込む狙いで、石油や天然ガスの開発を迅速に認可する方針です。
こうなると、ナフサ含め原油価格の下方圧力につながると予想されます。
ナフサ価格が下がると困るのが石油化学事業。ナフサ価格に連動して、石油化学製品の価格も下落が見込まれます。
中国でのオーバーキャパシティ問題で苦しむ中、石化メーカーにとっては泣きっ面にハチ。正念場を迎えそうですね。
EV政策
プラスとマイナスが入り混じるのが、EV政策。
トランプ大統領は、“EVの義務化”撤廃を掲げ、バイデン前政権からはEV政策が転換される見通しです。
ゆえに化学メーカーのEV関連ビジネスは向かい風なものの、どうも総悲観ではないようです。
というのもEV支援策であるインフレ削減法(IRA)は、法改正には議会の賛同が必要で、新政権での変更は限定的との見立てなのです。
さらにアメリカ国内ではすでに電池サプライチェーンが構築されつつあり、自動車メーカー各社も大規模な投資を進めていることから、大きなトレンドは変わらない可能性もあります。
なのでポイントは、新たな市場を創出できるか。
今後のEVは補助金でのごり押しではなく、自動運転やソフトウェアサービスで、従来車以上に価値を高められるかが問われるのではないでしょうか。
市場としては健全な状態だと思いますし、EVで出遅れていた日系自動車メーカーにはチャンスかもしれませんね。
ポイントは関税
ここまではおおむね予想通りといった感じでした。ただ意外だったのは。トランプ政権の目玉である関税の先送りです。
タリフマン(関税)を自称するだけあり、トランプ大統領は中国やメキシコ、カナダなどへの関税を公約に掲げていました。
正直多くの化学メーカーが気をもんでいるのが、この通商政策です。
中国やメキシコに関税が課されれば、現地のビジネスにマイナス影響が懸念されるだけでなく、追加関税の掛け合いから世界経済の停滞を招く恐れがあります。
場合によってはサプライチェーンの分断と再構築が生じ、日本企業も戦略の見直しや、それによるコスト増加などが迫られます。
ゆえに懸念材料であった関税が見送られたことで、市場の大きな混乱も回避されましたね。
ただ即時発動こそ見送られたものの、トランプ大統領は来月から関税を施行する可能性を示唆しています。
これは関税の引き上げを材料に良い条件を引き出す、お得意のディール外交ではあるものの、今後のトランプ氏の発言次第ではどう転ぶか分かりません。
ルールからディールへ規律が変わるなか、警戒感の高い状態が続きます。