AI技術の急成長が市場を動かし、特に化学業界にも大きな影響を与えています。
今回はAIブームで注目される化学メーカー二社と、注意点を解説します。
AIブームが再燃か
AIに再び注目が集まっています。
その火付け役はソフトバンクグループらが掲げる「スターゲート」というAI開発の共同出資事業。
米国で大規模なデータセンターの建設やAI開発に、少なくとも5000億ドル(約78兆円)を投資する計画を発表しています。
78兆円は聞いたことのない投資額で、これにはトランプさんもニッコリでした。
そんなわけで、化学セクターでもAI関連銘柄は注目を集めました。今回は気になる企業を2社解説します。
1社目 日東電工
まず紹介するのは日東電工、株価はじわじわ上げてきています。

出所:Yahoo!ファイナンス
生成AIの台頭からデータセンター向けの高容量HDD需要が急増しており、日東電工が手掛ける回路材料も需要が旺盛のようです。
中間決算では純利益が前年同期でなんと80パーセント増加、進捗率も61パーセントと絶好調でした。

ただ、主力のディスプレイ材料などで下期の調整を見込み、通期見通しは据え置いています。
とはいえ、生成AI需要は引き続き旺盛で、さらに海外売上比率の高い日東電工は円安メリットが大きくなります。
昨今の為替を加味すると、次回の決算では上振れも期待され、上方修正にも期待がかかります。
2社目 東京応化工業
続いて紹介するのは、東京応化工業。こちらも株価がグイっと上がっています。

出所:Yahoo!ファイナンス
東京応化の強みはフォトレジスト。
特にAI半導体に欠かせないHBMには、東京応化のEUV、ArF、バンプ形成用のフォトレジストが採用を増やしているとみられます。
フォトレジストは従来の前工程だけでなく、後工程にも用途が拡大しており、フォトレジストをフルラインナップする東京応化の強みも活かせそうです。
25年1月に発表した新中計では、こういった需要拡大を捉え、高い利益水準は維持しながら、3年で1.5倍程度の規模拡大を掲げています。

AIを追い風に、さらなる躍進に期待したいですね。
AI関連企業の注意点
他にも以前解説したトリケミカル研究所や扶桑化学工業、レゾナックらも反転上昇の気配があり、注目が集まります。
ただ注意点もあり、それはトランプさんです。
米中はAIで覇権を睨むことから、半導体市場も米中貿易摩擦の影響が懸念されています。
特にAI向けの先端半導体材料では、輸出規制や管理の厳格化など、日系メーカーは中国ビジネスに慎重にならざるを得ません。日本企業には、対中と対米で切り分けて考える、したたかで難しい舵取りが求められます。