決算解説

積水化学、5期連続最高益への挑戦。その裏にあるリスクとは?

こんにちは、化学業界を解説するごりおです。

今回は、積水化学工業の決算を解説します。

積水化学は、なんと5期連続最高益を目指しています。
化学業界が苦戦する中でも、着実に実績を積み重ね、堂々と最高益を更新し続けているわけです。

ただ、今年の目標達成は難しいかもしれません。
この記事では、積水化学の業績予想の裏側にある戦略と、ちょっと気になるリスクの話まで、紐解いていきます。

2025年3月期の業績は

まず、積水化学の2025年3月期(2024年度)の決算を解説します。

前期は絶好調

前期はなんと、売上・利益ともに過去最高を更新しました。

  • 売上高:1兆2978億円(前年+412億円/+3.3%)
  • 営業利益:1080億円(前年+136億円/+14.4%)
  • 純利益:819億円(前年+40億円/+5.1%)
画像

特に営業利益は、初めて1000億円を超え、同社にとって大きな節目となりました。

好調の要因は

セグメント別にみると高機能プラスチックスメディカル事業環境・ライフライン分野それぞれで最高の売上・営業利益を達成。
全てのセグメントが業績を押し上げました。

画像

2026年3月期の見通しは?

では、今期(2025年度)の見通しはどうでしょうか。

今期も強気の見通し

積水化学は、5期連続で過去最高益を更新する見通しを発表しました。
売上高が前期比5.1%増の1兆3645億円、営業利益が6.5%増の1150億円、純利益は微増ながら820億円を掲げています。

画像

このカオスな事業環境の中で5期連続最高益を目指す──そんな化学メーカーは、そう多くはありません。
信越化学のような派手さこそないものの、積水化学もまた、静かに底力を発揮する「隠れた化け物企業」なのかもしれません。

今年は向かい風

とはいえ、今期は少し厳しさも感じられます。

まず、積水化学を取り巻く事業環境は、決して楽観できるものではありません。
同社の業績と密接に関係する自動車生産やスマートフォン出荷台数は前期並みにとどまり、住宅市場も回復力に欠けています。

画像

つまり今期は、外部環境の追い風は期待できないわけです。

鍵は高付加価値製品の拡販

外部環境が追い風にならない中で、積水化学が増益を狙うカギとなるのが、「高付加価値製品の拡販」です。

実際、営業利益の要因分析を見てみると、「数量・構成」要素だけで284億円の増益を見込んでいます。

画像

つまり、単に販売量を増やすだけでなく、利益率の高い製品を積極的に売っていく──そんな戦略です。
例えるなら、大阪万博で和牛入りの「超高級そば」を販売し、数量と利幅の両方を同時に押し上げるようなイメージでしょうか。

目標は強気すぎ

ただし、この数値目標を慎重に見ていくと、やや強気すぎる印象も拭えません。

➀為替想定が円安

ひとつ目の懸念材料は、為替レートです。
積水化学が業績予想に織り込んでいる前提は1ドル=152円と、かなりの円安水準
為替は誰にも読めませんが、さすがにこの想定はリスクを孕んでいます。

画像

同社の為替感応度は、1円円安になるごとに営業利益が約5億円増える計算です。
仮に為替が142円だった場合、単純に50億円の下振れ要因になります。

②トランプ関税

さらに、トランプ関税の影響も無視できません。
積水化学自身は、関税による営業利益への影響額を25億円程度と試算していますが、この数字は業績予想には織り込まれていないようです。

画像

もちろん、積水化学は価格転嫁やコスト削減などで外部影響を最小限に抑える方針を示しています。
とはいえ、円高や関税リスクは留意しておく必要がありますね。

短期的な視点では慎重な姿勢が求められるものの、こうした逆風下で積水化学がどこまで踏ん張り、最高益更新を達成できるか──。
そのチャレンジを、引き続き注目していきたいと思います。

おすすめ記事

1

今回は総合化学メーカーと呼ばれる三菱ケミカルG、住友化学、三井化学、加えて旭化成、東ソーの5社を解説します。 事業内容も比較していますので、就活、転職、株式投資のご参考に良ければ最後までご覧ください。

2

Youtubeのコミュニティに寄せられたコメントをテーマに取り上げ、化学業界を見通してみる企画です。

-決算解説
-,