メーカーでは花形であることの多い研究職、そのほとんど人が大学院で博士や修士を取得しています。
研究職に就いた人の多くは大学での経験を活かして一旗揚げようと奮闘する一方で、企業での研究は大学院で経験したものとは異なり、意気消沈してしまう人も多いと思います。
大学院とメーカーの違いやメーカー研究職に求められる素質について、駅伝から考察しました。
メーカー研究職は駅伝型
大学院での研究期間は修士で2年、博士だと3年増えて5年となります。
修士ないし博士課程では、この限られた期間で求められた成果を出す必要があります。
しかし研究は簡単に成果が出るものでもないため、期間内にある程度の成果を上げるべく試行錯誤を繰り返し、全力疾走で研究に打ち込む必要があります。
特に博士は個人での成果を求められるので、与えられた期間で目標を達成する"短距離走型"な研究が求められます。
(博士課程の5年は十分に長いので、中距離走かもしれません。)
ゴールがあって主体的に取り組める大学院の研究は、大変だけどやりがいがあるんだね
一方でメーカー就職した場合、研究成果は個人ではなくチームで達成することになり、何世代もテーマを引き継ぎながら研究を進めることになります。
また企業ではコンプライアンスや人件費の問題から研究に避ける時間は限られており、時間をかけてじっくり研究に取り組みにくくなります。
したがって企業では大学時代のように個人で走りきるのではなく、ペース配分を意識しながらリレー形式で長距離を走りぬく、"駅伝"のような研究形態になります。
化学メーカーでは、いろんな制約のもとで研究を進める必要があるのか。
そのため平坦な道を走る人もいれば、険しい山道を走らざるを得ない人、最終走者となりゴールテープを切る人もいれば実はゴールがない道を走らされるなど様々な人がいます。
しかし駅伝同様、研究も論文や特許、上市といった形でゴールした人がえらいわけではありません(もちろん成果を出した方が良いのですが)。
若手の間にどのコースを走るかはタイミングと運次第になりますが、与えられた区間でどのような走りを見せるかが若手研究員の評価対象になります。
何に課題意識を持ち、手を動かしながらどのように考えるのか、研究活動における過程すべてを評価されているのです。
しかし大学の研究室と異なるところで、好き勝手に独自性を出せばそれが評価されるわけではありません。
研究は学問か労働か
大学と企業における研究者の違いとして、研究が学問か労働なのかが挙げられます。
大学での研究は論文という形で評価されるため、その研究活動は学問であり、新規性の高い最先端分野に切り込むような研究が多くあります。
一方で企業では社会貢献を通して利益を追求することに重きをおかれますので、売れる製品の開発に力を入れます。
企業は利益の出る製品を開発するために研究者を雇い、そして研究者が給料を貰えるのは期待される労働の対価なのです。
したがってメーカー研究職にとって、研究は労働ということになります。
そもそも研究する理由が違うんだね
先ほどの駅伝の例で考えると、走者となった研究者は自分が面白いと思う道ではなく、利益が得られると会社が期待する道を走る必要があります。
したがって自分が進みたい道とは異なるコースに進まないといけないことも多く、そしてその道には競合他社がひしめいているのです。
大学の研究と比較して企業の研究が面白くないと言われるのは、このような激しい競争に晒される点や若手の間は主体的に仕事に取り組めない点にあると思います。
大学院の研究が好きだった人からすると、ギャップがあるのかもしれないね
しかし給料をもらって研究をする人は、いわばプロ研究者のようなものです。
プロとは常に高みを目指し続ける人の中でも、その実力を認められた人、もしくはさらなる成長を期待される人です。
野球選手もサッカー選手もプロは自分なりの記録を更新しようと挑戦し続け、チームとしての勝利を目指します。
企業で働く研究者も同じで、自身に課された使命を全うしながら、会社の売り上げに貢献することが求められます。
特に若手研究員はこれからの成長に期待して採用されていますので、若手の間は下積みと認識して、自身の成長を意識した長期的な視点で仕事に取り組むことが大事なのではないでしょうか。
(研究者の自己研鑽については、下記記事でもまとめていますのでよければこちらもご覧ください。)
しかし上司の指示に従わず自分のやりたいことをやると評定にひびきますし、かといって上司の言うことを聞くだけではいずれ成長できなくなります。
メーカーの研究職では自身の役割を認識し、その過程でどのような行動を取り、何を得たのかが非常に重要なのです。