海洋プラスチック問題やサステナビリティが叫ばれる中、国際的にペットボトルへの風当たりは強くなってきています。
安価で軽く、透明で視認性も良いため大量生産されているペットボトルですが、石油資源から生産されている点やゴミとして目立つ点から環境負荷が高いと認識されているのです。
ペットボトルはそれだけでも日本のプラスチック生産量の6%程度を占めており、大手飲料メーカーであるサントリーは環境に優しいペットボトルの開発に力を注いでいます。
ペットボトルはどう変わるのか、サントリーの取り組みについて解説します。
1.サントリーHDの取り組み 「2R+B」
飲料メーカー大手のサントリーですが、清涼飲料では伊右衛門やサントリー天然水シリーズなどが有名です。
清涼飲料水には欠かせないペットボトルも、実は海洋プラスチック問題や脱炭素化の流れから今も変わり続けています。
(海洋プラスチック問題や脱炭素化の詳細については、過去記事にまとめています。)
現在サントリーが環境対応として進めているのが、ペットボトルの2R + Bです。これはReduce(プラスチック使用量の削減)、Recycle(ペットボトルの再資源化)にBio(植物由来資源の活用)を加えたものとなります。
一般的な3Rに含まれるReuse(ペットボトルの再利用)は衛生上難しいため、Reduce、RecycleにBioを加えた2R+Bを掲げているのです。
それぞれについて詳しく解説していきます。
Reduce
Reduceは前述の通りペットボトルに使用するプラ使用量の削減であり、具体的にはペットボトルの軽薄短小化です。
サントリーはこれまでもペットボトルの環境負荷低減に取り組んできており、それがいわゆるペットボトルの"軽薄短小"です。
ペットボトルを軽く、薄く、短く、そして小さくすることで使用するプラスチックの量を可能な限り少なくする取り組みですが、これはもう限界に近いところまで進められてきました。
Recycle
Recycleはペットボトルの再資源化となるのですが、すでにペットボトルのリサイクル率は85%以上と非常に高くなっています。
リサイクル率をこれ以上あげることは難しいと考えられており、そこでサントリーが取り組んでいるのは、B to B(Botolle to Botolle)のリサイクルです。
通常、回収されたペットボトルはトレイや繊維など、ペットボトル以外の材料へとリサイクルされます。
ペットボトルは飲料用途であるため、不純物といった安全性リスクが低いバージン(新品)のプラスチックから作られることが多いのです。
ここで課題となるのが、ペットボトルからリサイクルされたトレイや繊維は回収が難しいため、使用後はほとんど焼却処分されている点です。
つまりペットボトルがリサイクルされた後はトレイなどとして処分されており、ペットボトル自体は石油から生産されているわけです。
そこでリサイクル率の高いペットボトルをペットボトルへリサイクルすることで、焼却処分されることなく資源を循環させて、新たな石化資源の消費を抑えようという試みがBtoB(ボトルtoボトル)になります。
ペットボトルからペットボトルへのリサイクルについてはいくつか課題があり、不純物による安全性の問題やコスト、またペットボトルの効率的な回収などが挙げられます。
これらの課題は飲料メーカーであるサントリーだけではなく、飲料の生産や販売に関わる業界を横断したものとなります。
そこでサントリーはこれら課題を解決するため、自社技術のみならず、プラスチックのバリューチェーンを構成する各社で、共同出資会社を設立しています。
この共同出資会社である株式会社アールプラスジャパンは6月から事業を開始しており、持続可能な社会の実現に向けて、使用済みプラスチックの再資源化技術確立を目指しています。
Bio
Bioについてですが、これは石油資源から植物材料への代替を目指しています。
ペットボトルの原料は名前の通りPET(ポリエチレンテレフタレート)であり、テレフタル酸とエチレングリコールの共重合体です。
原料となるエチレングリコールもテレフタル酸も、石化資源となります。
このうちエチレングリコールはバイオエタノールから合成することができますが、芳香族化合物であるテレフタル酸を植物から合成する技術については現在検討されています。
サントリーではテレフタル酸をウッドチップから生成する技術開発を進めているようです。
2.今後の展開
サントリーは2030年までに全世界で使用するペットボトルをリサイクル原料、植物由来原料で生産するとしています。
すでに一部は商品となっており、GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶では石化資源を使用しない"また会えるボトル"を使用しています。
私たちの気が付かないところで、ペットボトルは変わり続けています。
ペットボトル自体は無くなりませんが、素材は着実に変わってくと考えられます。