化学メーカー各社の2021年度4-9月期の決算が発表され、多くの企業が増収増益を達成しています。
住友化学や三菱ケミカルHDの営業利益はコロナ禍にあえいだ前年と比較して2倍近い値に達しており、信越化学や旭化成、三井化学などでは半期として過去最高益を記録しています。
何が化学メーカーの増益をけん引したのか、また下期はどうなるのか、化学業界の背景について解説します。
なお動画でもまとめてますので、良ければこちらもご覧ください。
2021年上期は多くの企業で増収増益
2021年も年の瀬が近づき1年の締めくくりを意識する時期に何なりましたが、各企業も2021年上期(4-9月)の決算を発表しています。
化学大手メーカーの上期決算も出揃っており、新型コロナウイルスの影響であえいだ前年と比較して多くのメーカーで増収増益を記録しています。
売上高(前年同期比) | 営業利益(前年同期比) | |
信越化学工業 | 9413億円(32.5%) | 2984億円(61.9%) |
三菱ケミカルHD | 1兆8850億円(25.3%) | 1561億円(185.8%) |
住友化学 | 1兆3252億円(26.6%) | 1489億円(178.4%) |
三井化学 | 7435億円(38.5%) | 942億円(407.6%) |
旭化成 | 1兆1180億円(19.4%) | 1131億円(47.4%) |
東ソー | 4285億円(30.5%) | 653億円(270.2%) |
積水化学工業 | 5479億円(11.8%) | 355億円(58.5%) |
宇部興産 | 3066億円(-) | 190億円(459.8%) |
企業別にみると、三菱ケミカルHD、住友化学などでは前年比2倍近い営業利益に達しており、三井化学ではなんと昨年の4倍を超える利益を叩き出しています。
他にも信越化学や旭化成などでは半期として過去最高益を記録しており、住友化学や東ソーでも上期として過去最高益でした。
上記以外でもダイセル、東レ、帝人をはじめとする多くの企業が増収を達成しています。
特に総合化学メーカーの増益幅が著しいですね。
石化製品の価格上昇、半導体製品の旺盛な需要が背景
どうして多くの企業で調子がよかったの?。
2021年度上期における化学メーカーの増益には、石油化学製品の価格上昇が大きく寄与しています。
新型コロナ禍からの経済復調による原油・ナフサ の価格高騰に連動し、石化製品市況も大きく値上がりしていたのです。
世界経済回復による需要回復も進んだため、高い価格で石化製品を販売することができ、各メーカーの営業利益を押し上げました。
三井化学はビスフェノールAの歴史的な市況高騰の恩恵を受けて大きく増益しており、三井化学の基盤素材事業の営業利益は486億円と、全社増益幅の7割を占めています。
東ソーのクロルアルカリや旭化成のアクリロニトリルなども、同社の増益に貢献しています。
このようにもともと石化製品は好・不況の影響を受けやすい業界であり、今期の化学メーカーの増収増益は石化市況の高騰による追い風を受けた一時的なものとなります。
また石化市況の高騰とは別に、半導体材料の需要増も化学メーカーの増益に寄与しました。
上期は良すぎる状況であり、実力以上の収益となっている企業が多い印象です。
下期は慎重姿勢
2021年上期は好調な化学メーカーでしたが、下期については慎重な姿勢が目立ちます。
上期の営業利益を押し上げた石化市況の高騰もひと段落し、原材料価格の高騰や半導体不足による自動車の減産、中国電力制限や物流の混乱など懸念される材料が多く不透明感が強いことが原因です。
特に今回好調であった石化事業も長期的にみると向かい風であり、昨今のパリ協定やSDGsの潮流を受けて加速する脱炭素化の煽りを受けると予想されます。
三菱ケミカルHDは石化の分離、三井化学も石化再編を掲げており、今後も各社のテコ入れが進むと予想されます。
外部要因を跳ね返し高い水準で利益を上げ続けるためには、市況の影響を受けにくい高付加価値製品を伸ばす必要があります。
短期的には好調な石化部門ですが、各メーカー高付加価値製品へのシフトを急いでいます。