アルミニウムはアルミ缶や一円玉、自動車のほか実は航空機やロケットなどにも使用されています。
昨今の脱炭素やSDGsといった潮流を受けてアルミニウムの価値は再上昇すると予想され、実際に無印良品などでは飲料ボトルのアルミ缶への切り替えを進めています。
なぜアルミニウムが着目されるのか、解説していきたいと思います。
アルミニウムの性質
アルミニウムは原子番号13の金属元素であり、酸やアルカリと反応するため両性元素に分類されます。
イオン化傾向を見ても、アルミニウムは酸素と結びつきが強いという特徴があります。
工業的には軽さとさびにくさが大きな特徴です。
まず軽さですが、アルミニウムの比重は2.7と鉄(7.9)や銅(8.9)の3分の1以下と金属でありながらガラス(2.5)程度の重さとなります。
この金属離れした軽さがアルミニウムの用途を大きく広げており、自動車の輸送効率向上に大きく貢献しています。
またさびにくさですが、アルミニウムは空気中ではち密で安定な酸化皮膜を生成し、この皮膜が腐食を防止してくれるのです。
このような酸化被膜は自己修復性を有するため、被膜が傷ついたとしても内部が腐食されにくくなり、アルミニウムは他の金属に比べて耐食性が良くなります。
この耐食性の良さや軽量性を活かして、アルミニウムは船舶などにも使用されています。
さらに加工性が良く、アルミ箔や複雑な形状まで加工できる点も特徴です。
アルミニウム合金
アルミニウムの特性は軽いことをあげましたが、一方で純アルミニウムは強度が低いことが課題となります。
したがってアルミ箔や一円玉は純アルミニウムですが、ほとんどの用途には強度を向上したアルミニウム合金として使用されています。
アルミニウム合金は併用する元素により大きく1000~8000系に分けることができ、用途に応じて使い分けられているのです。
例えばアルミニウムと銅などの合金である2000系に属するジュラルミンは鋼材に匹敵する強度を有し航空機などに使用されています。
なおアルミニウムが航空機へ使われるようになったのは、アルミハニカムパネルの存在も大きいです。
これはアルミ箔をハニカム状に加工したハニカムコアを面板でサンドイッチしたもので、空孔を有するも丈夫なハニカム構造により、体積の9割が空気でありながら高強度を保てるのです。
アルミハニカムパネルはスカイツリーのシャフト部分にも使われています。
アルミニウムの歴史
アルミニウムは地殻中で三番目に多く存在する元素で、埋蔵量自体は鉄よりも多い金属です。
例えば雲母や長石にもアルミニウムは含まれていますし、ルビーやサファイヤも主成分は酸化アルミニウムです。
そんな自然界に多く存在するアルミニウムですが、酸素と結びつきが強いため自然界ではほとんど単体で存在せず、精錬することも難しかったのです。
そのため鉄や銅は4000年以上も昔から使用されてきたのに対して、アルミニウムの発見は1807年、工業的な生産が始まってから1世紀足らずの若い金属なのです。
アルミニウムの生産は1886年、アメリカのチャールズ・マーティン・ホールとフランスのポール・エリー・ルイ・ツーサンの2人が同時期にアルミニウムの精錬方法を考案するのを待つことになり、このホール・エルー法は現在も世界中で採用されています。
アルミニウムの精錬では、まず原料であるボーキサイトと呼ばれる酸化アルミニウムの鉱物から不純物を取り除き、アルミナ(酸化アルミニウム)を得ます。
その後アルミナに氷晶石などを混ぜ、電気炉で溶融、電気分解によりアルミニウムを得ます。
このホール・エルー法の発見により安価にアルミニウムが製造できるようになり、瞬く間に世界中で使用されるようになりました。
ちなみにアルミニウムの電解法を同時期に発表したホールとエルーですが、実は誕生した年も亡くなった年も同じという、不思議な関係にあります。
日本においても、1934年に現在の昭和電工に当たる企業がアルミニウムの精錬を始めています。
アルミニウムは電気の缶詰と表現されるようにその精錬には莫大な電力を消費するため、二度のオイルショックによる電力価格の高騰を受けて、原価に占める電気代の比率の大きいアルミニウム事業は採算性を失ってしまいました。
2014年には日本のアルミニウム精錬工場は全て閉鎖し、現在は輸入に依存しています。
このようにアルミニウム精錬は莫大な電力を使用するため、世界的にみると、安価な水力発電を有する国や、資源国で精錬が行われているようです。
アルミニウムの用途
アルミニウムは金属の中では鉄につぐ二番目の生産量を有しています。
その用途の4割は輸送用機器であり、アルミニウムを用いることで車体を軽くすることができます。
車体が軽くなることでスピードも出せ、また詰める荷物の量が増えたり、燃料も少なくてすむため、 自動車や鉄道車両などに使用されています
例えば日本で一番早い新幹線である「はやぶさ」の車両にはアルミニウムが用いられており、なんと時速320km/hで走行することができます。
自動車ではボディから足回り部品まで使用されており、アルミニウムの占める割合は7〜8%、一台当たり100kg程度使用されています。
昨今は自動車などの環境性能が重要視されるようになったこともあり、軽量効果の大きいアルミニウムは幅広く使われているのです。
特に今後普及するとされる電気自動車ではバッテリーを積むため重量が重くなる傾向にある一方、航続距離はガゾリン車よりも短いため、車体の軽量化に向けてさまざまな素材開発が進められており、アルミニウムも着目されているのです。
また鉄道車両にもアルミニウムは使用されており、鉄よりも製造費用は高くつきますが、車体を10〜15%程度軽量化でき、錆びにくいためメンテナンスの手間が減り経済的のようです。
リサイクルの王様
そんなアルミニウムですが、近年はSDGsなど持続可能性が重要視されており、リサイクル性の高さから再注目されています。
アルミニウムは同じ種類の合金を集めて溶かすことで同じ品質のものが作れ、さらに使用されたアルミニウムをリサイクルする際に消費する電力は、地金から製造する際の3%だけで済みます。
例えばアルミ缶では90%以上がリサイクルされており、再びアルミ缶に使用されています。
アルミ缶は1971年に登場しましたが、スチール缶と比べて軽量で輸送コストが低いことや、熱伝導度が高く早く冷えることなどから普及し、年間30万トン程度消費されており、いまや飲料缶の半分程度を占めています。
そのリサイクル性の高さから、無印良品などではペットボトルの代わりにアルミ缶を導入しています。
ペットボトルに比べるとコスト高で、中身の見えないアルミ缶は売れにくくなるリスクがあるのですが、環境配慮は企業としても取り組むべき重要課題であり、無印良品は率先して切り替えを行ったようです。
このような環境貢献への動きは欧米が先行しており、アップルも再生アルミニウムを100%使用したMacBook airを発売しています。
日本においても脱炭素の潮流を受けて、アルミニウム製品がどんどん普及するかもしれませんね。