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【企業・銘柄分析】どうなる中堅化学メーカー?経営計画を比較解説【化学メーカー解説】

化学各社はどのような分野へ投資し、成長しようとしているのか、中堅化学メーカーの経営計画から探っていきたいと思います。

今回対象とした企業はカネカ 、クラレ、UBEの三社です。

化学各社は積極投資

化学工業日報社のアンケートによると、2022年の化学・素材企業の設備投資額は前年より16.8%増える見通しとなっています。

設備投資額が増える企業は集計対象となった55社中46社と全体の86%を占めているだけでなく、21年度比減の企業も大型投資やM&Aの反動減も多く、化学企業の投資マインドの高さが伺えます。

なぜ化学各社は積極的に投資を計画しているのか、またどのような分野へ投資し、成長しようとしているのか、今回は中堅化学メーカーの経営計画から探っていきたいと思います。

中堅化学三社

では化学メーカーの経営計画を比較していきましょう。

昨今は新型コロナやウクライナ進行など世界情勢が目まぐるしく変化しているため、2022年以降に経営計画を発表した企業に焦点を当て、同程度の規模感を持つ化学メーカーの経営計画を比較したいと思います。

今回対象としたのは、それら条件を満たしたカネカ、UBE、クラレの3社です。

ではまず21年度の各社の売上をおさらいしておきましょう。

2021年は好況な市況や販売数量の増加により各社良好な決算となっており、3社ともに売上を6000億円台に載せ、営業利益も前年比で5割以上増加しています。

中でもクラレは営業利益が頭一つ抜けており、この要因は後ほど解説しますが、会社の規模を表す時価総額を比較してもクラレが最も高く、各社化学業界で20位前後となっています。

続いて財務指標も見ておきますと、自己資本率は一般的に40%を超えていれば潰れないと言われるなか、各社50%前後となっており、健全な財務体質であることが伺えます。

効率よく稼いでいるかの指標であるROEは各社7%程度となっておりますが、投資対象の目安となりやすい10%と比べると、やや物足りない数値となっています。

そのような要因もあってか、株価が割安かの指標であるPBRは3社ともに1未満と、割安の水準となります。

一方で予想配当利回りは3〜4%となっており、東証プライムの平均値が2.4%、3%を超えると高配当と呼ばれる中でUBEを筆頭に各社高配当株と言えると思います。

最後に年収や労働環境等を比較しますと、数値上ではクラレがワークライフバランスに優れますが、この辺りは福利厚生や勤務地、職種なども総合的に判断することが重要になります。

さて、上記3社は2022年に新経営計画を発表しており、3〜5カ年の経営目標を掲げているのですが、2024年に向けた具体的な目標値を見ていきますと、3社で大きく分かれる結果となっているのです。

クラレは2024年に向けて売上、営業利益ともに約10%増の安定成長を掲げているのに対して、カネカは売上を8000億円にのせ、営業利益も50%増と強気な目標値となっています。

対してUBEは目標値が減収減益となっており、まさに三者三様の数値目標となっているのです。

2021年の売上は同程度であったのに対して、なぜ3社の目標値がこれほど異なっているのでしょうか。

各社の経営計画を詳しく読み解いていきたいと思います。

クラレ

まず紹介する企業はクラレです。

クラレは岡山県倉敷市で倉敷絹織として創業、当初は繊維を祖業とする化学メーカーであり、アルパカのCMでその存在を知った方も多いのではないでしょうか。

クラレといえばポバールに代表されるビニルアセテート事業が有名です。

ポバール資料より(株式会社クラレ)

ポバールは分子中に水酸基を有し、合成高分子でありながら水に溶けるというユニークな特性を持ち、繊維やフィルムに加工されたり、接着剤などの原料としても使用されます。

クラレはこのような樹脂やフィルムで世界トップシェアの製品群を有しており、クラレの売上の半数、営業利益の多くを稼いでいる高利益率なコア事業なのです。

他にもメタクリル樹脂や炭素材料といった機能材料事業やイソプレン、人工皮革なども手がけていますが、営業利益で見るとややビニルアセテート事業への依存度が高い傾向も見て取れます。

そのようなクラレですが2022年2月に中期経営計画を発表、2024年に売上高6800億円、創業100周年となる2026年には売上高7500億円、営業利益1000億円を目指しています。

セグメント別に見ると、主力のビニルアセテート、イソプレンや機能材を中心に伸ばす計画のようで、これら事業成長の主戦場とするのがアジアや欧州といった海外です。

実はクラレは海外売上高比率が7割と非常に高く、すでにグローバルに製造拠点や物流網を有しており、これらグローバルネットワークと原料からの一貫製造体制により安定供給体制を確立していく方針としています。

アジアでのエバール新プラントの建設などをはじめとした成長投資を中心に5年間で3800億円の投資を行い、欧州やアジアで拡大する需要を取り込むことで確実な成長を図っているのです。

中期経営計画PASSION2026より

世界オンリーワンの製品群と技術力を有するクラレならではの戦略と言えるのではないでしょうか。

UBE

続いてUBEですが、こちらは山口県の宇部で創業、2022年に宇部興産から呼称変更して現在の社名となっており、宇部の石炭や石灰石を活用した化学やセメント事業を祖業としている点が特徴です。

UBEは2030年をターゲットとした長期ビジョンを公表しており、その1st ステージとして24年度目標を打ち出しているのですが、目標とする売上、営業利益は共に21年度比減となっているのです。

これには現在行なっている事業改革が影響しており、UBEは今まさに生まれ変わりを図っている企業なのです。

まずUBEの事業内容から見て見ましょう。

UBEはラクタムといった基礎化学品から、電池材料などの機能品までを手がける化学系の事業と、セメントや成型機械といった非化学系の事業からなっており、セメント事業は売上では1000億を超える一大事業でした。

しかしUBEの泉原社長は、「今後、わが国ではエネルギー多消費型事業の規模の利益で勝負する汎用品では成り立たず、スペシャリティ事業に軸足を移さざるを得ない」とし、従来の汎用品による規模のビジネスではなく、エネルギー負荷が小さく高収益なスペシャリティ事業で稼ぐ新生UBEの方針を打ち出しているのです。

そして2022年4月にはCO2排出量が多く、利益率も高くないセメント事業を分離、移管しているのですが、規模としては大きいセメント事業を移管したことで、22年度は減収減益を見込んでおり、経営計画最終年である24年度の経営目標も市況が好調であった21年と比較するとマイナスとなっているのです。

しかし経営計画でも強調していたのはスペシャリティ化学への質的転換であり、24年で営業利益の60%を、30年には70%以上をスペシャリティで稼ぐ体質にするとしています。

中期経営計画説明会資料より

では具体的にはどのような事業を成長の源泉にしようとしているのでしょうか。

総額1620億円の設備投資や研究開発費のうち50%をスペシャリティに振り分けるとしており、具体的にはすでに電子材料向けに好調なポリイミドフィルムやそのモノマーを増強し、次世代ディスプレイや電池用途、5G対応フィルムなどの開発を進め事業の裾野を広げます。

他にもセパレーター、窒化ケイ素、分離膜、コンポジットなどUBEの有する機能性化成品の拡大を図り、市場が拡大する電子材料やEV、中国でのVOC規制強化などを的確に捉え事業成長につなげます。

これまでに機械やセメント事業の分離を進めてきており、22年からは新社名となったUBE本体はポートフォリオの転換を進め、化学メーカーとして生まれ変わりを図る計画なのです。

カネカ

最後はカネカについてですが、化学で願いを叶える会社のキャッチフレーズでおなじみなのではないでしょうか。

カネカは1949年に鐘淵紡績より分離した非繊維系事業を源流としており、当初は塩ビなどを扱っていました。

その特徴は何と言っても化学を中心に事業が多岐にわたる点であり、塩ビのような汎用の化成品から機能性樹脂、食品関係や医療・医薬に電子材料など幅広く製品を展開しています。

セグメント別に決算を見て見ますと、塩ビなどの樹脂を手がけるマテリアルが売上、利益を牽引している一方で食品関係のニュートリションは値上げが難しく、昨今の原料高も加わり採算が悪くなっているのです。

このようにカネカは売上、利益ともに塩ビ等を含むマテリアルが半分程度を占めているのですが、2022年5月に公表された中期経営計画において、2024年にはQOL、ヘルスケア、ニュートリションの3事業を中心に営業利益を50%近く伸ばし、先端・新規事業主体のポートフォリオへと転換させるとしています。

売上目標も他社と比べると強気の8000億となっているのですが、具体的にどのような成長戦略を描いているのでしょうか。

まず投資枠は3000億円としており、そのうち60%をヘルスケアなどの先端事業群に投資するとしています。

最も投資額の多いヘルスケアでは、バイオ医薬品CDMOのベルギー拠点増強や医療機器事業の新工場建設などを計画しており、他にも独自のゲノム編集技術を活用した種子事業に参入するなどして21年度から80%増近く利益を積み増します。

食品などを扱うニュートリションでは、人での効果が明確な乳酸菌製品を提供するとし乳酸菌工場の建設などに投資、利益率の高い製品群とすることで前期比の倍近い100億円の営業利益を目指しています。

医薬品のCDMOや健康食品は高齢化社会を背景に今後大きな市場拡大が見込まれる分野だけに、ヘルスケアとニュートリションの2事業に積極投資することで営業利益を150億円近く積み増します。

カネカは他にも生分解性プラスチックや太陽電池、シリコーンポリマーなども手がけており、こうした先端事業の拡販先として、中国を中心としたアジア戦略を強化するともしています。

こうした先端事業の拡販先として、中国を中心としたアジア戦略を強化するともしています。

他社と比べて大幅なポテンシャルを秘めた企業でもあるのです。

総括

さて、最後に各社の成長戦略を総括して終わりにしましょう。

オンリーワン製品に強みを持つクラレは主力事業を中心にグローバルな成長を掲げており、既存事業からの構造改革を進めるUBEは利益率の高いスペシャリティを強化、カネカは高い成長性が期待されるヘルスケアなどに積極投資することで高成長を狙います。

投資額は、ヘルスケア強化のためおそらくM&Aも活用するであろうカネカが、3年で3000億と高額になっています。

続いて2024年の売上目標等では、ヘルスケア市場の拡大を取り込むカネカが高い数値を掲げており、今回紹介できませんでしたが温室効果ガスの削減率では構造改革を進めるUBEが50%と頭一つ抜けています。

掲げた目標に対して各社が

どのように成長するのか、注目して行きましょう。

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