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ヘルスケアに強みを持つ企業1 富士フイルム

近年化学メーカーによる構想改革が進んでいますが、今後の主役となるのがスペシャリティと呼ばれる高付加価値製品です。

その中でも成長が期待される、ヘルスケア分野に強みを持つ企業をシリーズで紹介したいと思います。

今回取り上げる企業は富士フイルムです。

化学メーカーがヘルスケアに積極投資するわけ

ヘルスケアには医薬品や検査薬の他にも医療機器、生体材料など幅広い製品が含まれており、実は医薬品は出荷額でみても石油化学に次ぐ規模があります。

景気の影響で浮き沈みの激しい石油化学と比べるとヘルスケア製品は安定した収益が見込める上に、少子高齢化の日本においても健康志向の高まりから市場が成長、世界的にみても大きな伸びが期待されます。

またヘルスケア製品の開発には時間と技術力を有するため新興国の追い上げも少なく、高い収益性が期待されるのです。

そのため、国内や先進国の化学メーカーで競争が激化している分野でもありますが、ヘルスケアを制したものが次の化学業界を制するといっても良い、まさに天下分け目の最前線なのです。

そんな第一線であるヘルスケア分野に強みを持つ企業を紹介します。

富士フイルム

まず紹介する企業は富士フイルムです。

富士フイルムは1934年に、現在のダイセルに当たる大日本セルロイドの写真フィルム部から分離し設立されました。

ちなみに富士フィルムではなく、富士フイルムが正式名称となります。

操業当初はセルロイドの新規需要開拓をテーマとした写真フィルムの国産化を目指しており、事業化に成功した富士フイルムは市場の拡大とともに成長していきます。

写真感光材料の出荷額は2000年ごろにピークを迎え、2001年に富士フイルムもレンズ付きフィルムカメラ「写ルンです」で一億本以上売り上げています。

しかしその後はデジタル化の流れでフィルム市場も急落、2000年に富士フイルムで売上の6割を占めた写真事業も、10年後の2010年にはピークの1割以下にまで落ち込み、本業消失の危機となりました。

写真感光材料の出荷額
経済産業省 工業統計より作成

しかし富士フイルムも2000年以降は積極的に事業転換を進め、そこで強化した事業の一つがヘルスケア。今やヘルスケア&マテリアルズで売上の半数近くを占め、見事に事業転換に成功しています。

ff-integrated report2021より

他の化学系メーカーとヘルスケア部門の売上を比較しても、かなり売上高が高いことがわかります。

2022年化学メーカーヘルスケア部門の売上見込み

また富士フイルムのヘルスケア部門はここ数年右肩上がりで、2022年3月期はなんと売上高7900億円、営業利益は前年比の2倍近い1000億円と、過去最高益を見込んでいます。

富士フイルム ヘルスケア部門売上

利益を牽引したのがメディカルシステム事業とバイオ医薬品のCDMO事業です。

それぞれについて解説してきます。

メディカルシステム事業

メディカルシステム事業は富士フイルムのIT技術を活用したシステムなどを医療機関に提供しており、CTといった画像撮影装置から受信した画像を管理する医療用画像管理システムは世界シェア一位となっています。

さらに2021年には日立製作所からCTやMRIといった画像診断装置事業の買収も行なっており、画像診断関連装置のラインナップを拡充させ、事業の強化を進めています。

一方画像管理システムは需要が一巡し、市場規模は横ばいから微減で推移するとの見方もあります。

そのため富士フイルムは画像診断を支援する人工知能の開発を進めているようですね。

バイオ医薬品のCDMO

今後も強い伸びが期待されるのが、バイオ医薬品のCDMO(製造受注サービス)です。

これはバイオ医薬品をCDMO、つまり受注製造する事業となるのですが、まずバイオ医薬品とCDMOのそれぞれについて解説したいと思います。

まずバイオ医薬品ですが、これは遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造した、タンパク質を有効成分とする医薬品のことです。

一般的な薬は化学反応により合成される低分子化合物で、その分子量を比較すると圧倒的であり、バイオ医薬品は生物の力を借りることで、人の手では困難な巨大で複雑な構造を有する医薬品を作り上げているのです。

一般社団法人 くすりの適正使用協議会より

ちなみにバイオ医薬品はタンパク質であり、経口摂取すると分解されるため注射剤が一般的です。

バイオ医薬品は低分子医薬品と比較して、一般的に薬効が高く副作用が少ないというメリットがあり、バイオ医薬品市場は年率8-9%で伸びると予想される上に、さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴う検査薬・ワクチン・治療薬の特需も取り込む、医品の中でも特に成長分野なのです。

しかしバイオ医薬品は培養により製造するため大量生産には数百〜1万リットルにもなる培養タンクが必要で、設備投資や品質管理にも多額の費用がかかることから製薬メーカーが開発を外注するケースが増えています。

そこで産まれたのが、製造・開発(製剤研究や治験薬製造)を受託するサービスであるCDMOなのです。(詳しくは下記記事で紹介しています。)

医薬品開発では欧米の企業が先行している一方で、日本企業も発酵技術などには強みを持っています。

そこでバイオ技術を有する化学企業がバイオ医薬品のCDMOを重点事業に位置付け投資を行なっているのですが、中でも富士フイルムはバイオ医薬品のCDMOで国内首位、世界でみても2位グループとなっています。

富士フイルムのバイオ医薬の強みは、生産に欠かせない培地も手がけている点で、独自の培地を開発したことで、効率的な生産を可能にする連続生産システムの実用化に世界で初めて取り組んでいます。

実用化されれば、バイオ医薬品の課題である生産効率が3倍以上に上昇、コスト削減も期待されます。

今後も1000億円近い大型設備投資を行い、2025年には売上2000億円を掲げており市場の成長を追い風にさらなる成長が期待されます。

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