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新会社レゾナック発足、その背景には昭和電工による日立化成の買収が

昭和電工は2023年1月から持株会社体制に移行し、社名を「レゾナック・ホールディングス」に変更すると発表しました。

この構造改革は2020年に買収した日立化成(現昭和電工マテリアルズ)との統合が狙いと思われます。

今回は昭和電工による日立化成の買収からレゾナックHD誕生までの流れを解説します。

昭和電工と日立化成

昭和電工は電気化学に端を発し、現在では無機材料から有機、金属など幅広く扱う総合化学メーカーであり1939年に昭和肥料と日本電気工業が合併していまの会社名となっています。

昭和肥料(株)川崎工場

日立化成買収前、2018年度の売上高はおよそ1兆円、営業利益も1800億円と非常に好調で鉄鋼生産の電気炉で使用される黒鉛電極やHDDの磁気ディスクが売上を牽引していました。

日立化成の買収により2021年度の売上高は1.4兆円となり、今や花王や三井化学を抜いて化学業界6位に浮上しています。

対して日立化成は日立製作所の化学部門が独立した日立グループの企業であり、今は独立していますが、かつては日東電工もこの日立グループに所属していました。

日立化成は日立金属・旧日立電線とともに、日立御三家と言われるグループ内でも代表的な存在でした。

親会社の日立製作所が株式の半数以上を保持している一方で、日立化成の売上に占めるグループ向けの比率は高くなく日立化成は独立心が強いと見られてきた上場子会社なのです。

その事業内容は大きく分けて機能材料とモビリティの二分野で、日立化成は特に電子材料に強みを持ちリチウムイオン電池の負極材に使われる人造黒鉛や半導体用封止材ではトップクラスのシェアを有し2018年度は全体で7000億円近い売上がありました。

他にもライフサイエンス分野にも進出することで、さらなる成長事業も画策しており、また卓球の実業団も有し、石川佳純選手のスポンサー企業でもあります。

このように世界屈指の規模を有する日立グループの御三家であり、電子材料やライフサイエンスに特徴を持つ日立化成はその後の半導体バブルやヘルスケア分野の急成長で大きく躍進していくかのように思われたのですが、2019年に親会社である日立製作所が日立化成の保有株式の売却を決定したのです。

この背景について詳しく解説していきます。

日立製作所、日立化成を売却

事の発端は2008年のリーマンショックで、親会社の日立製作所は製造業を中心に、連結業績で7800億円にも上る巨額の赤字を計上したのです。

これは当時の日本の製造業としては過去最大額でした。

日立製作所はこの大赤字を受けて、景気や市況の影響を受けやすい従来の製造業系の事業からIoTといったデジタル化のソリューション事業に注力しており、収益性の低い事業を非中核事業として聖域なく売却していたのです。

そのようななか日立化成は親会社のデジタル事業と相乗効果が薄く、また業績が低調に推移していたうえに、2018年には品質不正が明らかになり信頼が急落、窮地に立たされていました。

そのような背景もあり、日立グループの御三家と言われた日立化成も売却は止むなしとなったのですが、そこで買収に名乗りを上げたのが昭和電工です。

昭和電工は黒鉛電極が好調であったものの、これは市況の影響を受けた一時的なものでありHDD磁気ディスクも長期的に見ると安定した成長が見込めず、新たな成長の柱を必要としていました。

そこで目をつけたのが半導体材料です。

半導体材料は長期的な市場成長が期待される上に汎用品と比べると収益性もよく、昭和電工も高純度ガスや研磨剤といった川上領域の電子材料で世界トップシェアを握っていました。

対して日立化成は川下の電子材料に強みを持っていたため、昭和電工は日立化成を取り込むことで情報電子分野のバリューチェーンを川下へ広げ、競争力を強化する狙いがあったと見られています。

実際に昭和電工は、日立化成の買収により世界トップクラスの機能性材料メーカーを目指すとしており、5Gをはじめとする半導体関連材料の伸びを追い風に、この分野で成長戦略を描いているようです。

こうして日立化成は昭和電工に買収され、昭和電工マテリアルズに名前を改め子会社化されています。

しかし2019年時の昭和電工の時価総額は4000億円、対して日立化成は8000億円越えであり、“小が大をのむ”と表現され、化学業界が騒然としました。

そしてそんな異例の買収劇が、何事もなく進行するはずもありませんでした。

昭和電工の財務状況が悪化

そんなこんなで日立化成を買収した昭和電工でしたが、その買収費はなんと総額9600億円にも及びました

これは昭和電工の時価総額の2倍以上であり、ソフトバンクによる球団買収が300億円程度だったと考えると、日本の野球球団全てを買収できる額かもしれません。

なぜこのような価格になってしまったのでしょうか。

確かにこうした買収時には企業のブランドなどに応じてのれんと呼ばれる時価総資産以上のプレミアがつくのですが、加えて日立化成は売却が表面化したことで株式公開買い付けが期待され、株価が高騰していたのです。

2018年に1500円程度であった株価は、2019年に売却が表面化すると4600円まで上がっていました。

そのため日立化成の買収に関心のあった三井化学なども、あまりにコストがかかりすぎると撤退してしまいました。

最終的に最も提示額が大きかった昭和電工が日立化成を買収することになりましたが、売上高8000億円近くの昭和電工からすると9600億円を投じた日立化成の買収はかなり思い切った決断のようにみえます。

実際にこの買収ではレバレッジをかける、つまり銀行からの借り入れも行っており、当然ではありますが昭和電工の財務状況は悪化、買収資金のために有利子負債も急増し結果として買収後の自己資本比率は20%と買収前の46%の半分以下にまで落ち込んでしまいました。

日立化成買収の流れ

そこで2020年12月には、財務状況の健全化もはかり2000億円の事業売却も含む短中期でのシナジー創出策を公表。

2021年には鉛蓄電池・アルミ缶・電子部品用アルミ箔事業など多岐にわたる事業の売却を公表しており、それら売却により目標としていた2000億円のうちすでに8割程度は売却が進みました。

かつてない異例の高額買収に新型コロナ禍が重なり難しい舵取りが進められていますが、こうした売却や資産のスリム化により財務状況の安定化は着実に進んでいるようです。

このような事業売却はネガティブな印象を受けますが、平常時では手をつけがたい不採算事業の整理やコスト構造改革が財務状況の悪化を建前に断行しやすい環境になっている面もあります。

また化学メーカーは扱う品種も多岐にわたるため、日立化成とのシナジーを意識した選択と集中が求められ今回の事業売却で収益性の良い事業が残ることで、結果的に盤石な経営基盤が整うと期待されます。

とはいえ今回の買収のために昭和電工の既存事業も容赦無く売却しているため、社員からすると複雑な心境ですね。

レゾナックの誕生

買収に伴う財務状況の健全化も一区切りした昭和電工ですが、2023年1月から持株会社体制に移行し、社名を「レゾナック・ホールディングス」に変更すると発表しました。

これは日立化成との事業統合が主な目的と推測されます。

現在昭和電工マテリアルズは、買収時に設立された昭和電工の目的会社であるHCホールディングスの完全子会社となっています。

この複雑な構造では買収した昭和電工マテリアルズとのシナジー創出が難しいため、抜本的な構造改革が必要でした。

そこでまず昭和電工の全事業を昭和電工マテリアルズへ承継させる会社分割を行います。

ついでHCホールディングスと昭和電工マテリアルズを合併さらになんやかんやすることで昭和電工は持株会社であるレゾナックホールディングスに、昭和電工と昭和電工マテリアルズの事業は持株会社傘下のレゾナックへ移管されることになります。

持株会社体制では、親会社となる持株会社は経営に、子会社は事業に専念することになります。

したがって子会社に2社の事業を移管することで統合シナジーの早期実現が期待され、持株会社となるレゾナックHDはグループ全体を俯瞰した経営戦略や資源の適切な配分を担います。

統合新会社では、サステナビリティ経営を推進するとしており、プラスチックのケミカルリサイクルやCO2の分離回収などの技術開発に取り組んでいるようです。

なおこの構造改革は2022年9月の株主総会で承認を経て実施されます。

レゾナックに込められた思い

最後に新社名のレゾナックは共鳴を意味する「RESONATE」と化学の「CHEMISTRY」のCを組み合わせたもので、統合新会社の目指す方向性である「共創型化学会社」を表現しているようです。

”R”の右上がりの2本線が共鳴から生まれる共創のシンボルのようです。

なお昭和電工の高橋秀仁社長はこの共創型という言葉に、

「社会課題の解決にはイノベーションが不可欠だが、一社だけで実現するのは難しく、志を共にする仲間と繋がる必要がある。」

という思いを込めているようです。

新体制のもと、これまでにはなかったイノベーションに着目したいですね。

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