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化学メーカー 企業力ランキングを解説

今回紹介するのは、日刊工業新聞社が公表した第19回 企業力ランキング。

主要上場企業※を対象に、総合的な評価で「真に力のある企業」を選ぶことを目的にしています。

※上場企業 株式を証券取引所で売買できる企業。

本記事では、上位にランクインした化学メーカーを解説します。

企業力ランキングとは

ではまず、企業力ランキングの集計方法を紹介します。

収益性と安定性について、直近三期の業績に基づいて定量評価しているほか、アンケートによる定性評価も行っています。

これによって、業績だけでは把握が難しい真に力のある企業を選出しているようです。

詳細な集計方法は下記に記載しています。平均得点は製造業で38.5、非製造業では36.8。

集計方法

【収益性】

・ROE、ROA、営業利益額、直近五期の売上高伸び率、直近3期の労働生産性。

【安定性】

・EV(企業価値)、有利子負債比率、株主資本比率、FC、従業員数、直近3期の当期赤字の回数。

※いずれも連結ベース。特記しない指標は直近3期平均で配点。変則決算は年換算。上限・下限は超過分を切り捨てて配点。

※ROEは株主資本当期純利益率、ROAは総資本当期純利益率、EV(企業価値)は時価総額+ネット有利子負債額、FCはフリーキャッシュフロー。

化学メーカーの順位は

では、化学メーカーの企業力ランキングはどのようになっているのでしょうか。

上位3社を解説します。

29位 ユニ・チャーム

ユニ・チャームが29位にランクイン。

得点の詳細は、収益性14.2、安定性8.6、アンケート33.5で総合56.3点と、バランスよく得点しています。

ユニ・チャームは紙おむつや生理用品に強みを持ち、

不織布・吸収体ビジネスにおいて日本No.1のシェアを有している専業トイレタリーメーカーです。

化学業界では珍しいBtoCメーカーであることから、企業ブランドや消費者意識を重要視しており、

生活必需品を扱うため景気変動に比較的強く、企業力が総合的に高く評価されていると推察されます。

ライバルの花王などはコロナ禍でのメーキャップ分野の落ち込みや、原材料高で苦戦していましたが、

ユニ・チャームは海外展開で先行したことで、好調に業績を拡大していますね。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

18位 富士フイルムHD

18位は富士フイルム。

得点の詳細は、収益性13.9、安定性10.9、アンケート36.5で総合61.4点です。

現在のダイセルにあたる大日本セルロイドから分離し設立、写真感光材料にて規模を拡大してきました。

2000年以降は積極的に事業転換を進めたことで、今やヘルスケア&マテリアルズで売上の半数近くを占め、

高成長、高収益なポートフォリオへの転換が達成されています。

依然解説した「就職偏差値が高い企業ランキング」でも上位に位置しており、学生にも人気の会社のようですね。

1位 信越化学工業

総合1位は信越化学工業。

収益性25.6、安定性15.8、アンケート38.3で総合79.7点と圧倒的です。

主力事業である塩化ビニル樹脂とシリコンウエハーは、ともに世界首位のシェアを誇っています。

売上高では3兆円近い規模がありながら、営業利益に関しては9982億円で1兆円に迫る勢い、

そして営業利益率は驚異の35.5%と、単純なものづくり企業としては異次元のレベルにいます。

規格外の利益を叩き出していることが分かり、規模と利益を両立した怪物企業なのです。

信越化学が得意とする塩化ビニル樹脂は、本来コモディティでコスト勝負、高利益率が期待できる事業ではありません。

ただコスト勝負の塩化ビニル樹脂について信越化学は、なんと徹底的にコストで勝負する戦略を取っており、

原料からの一貫製造体制をはじめとする徹底した生産の合理化、品質や供給力に裏付けられた顧客との良好な関係を基盤に、

塩化ビニル樹脂で世界トップまでシェアを拡大、他社と比較しても高収益な事業となっているのです。

他化学系メーカーの順位

今回は企業力ランキングで25点以上を獲得した上位企業から、東証の分類が化学、ゴム製品、繊維、ガラス・土石の企業を中心にピックアップしました。

詳細は本誌をご確認ください。

順位会社名総合得点アンケート収益性安定性
1位信越化学工業 (化学)79.738.325.615.8
11位ブリヂストン (ゴム製品)63.537.018.58.1
18位富士フイルムHD (化学)61.436.513.910.9
29位ユニ・チャーム (化学)56.333.514.28.6
44位日東電工 (化学)50.726.314.510.0
55位花王 (化学)48.027.312.88.0
56位積水化学工業47.832.09.46.4
58位三井化学47.529.815.12.7
67位扶桑化学工業46.521.016.39.3
69位AGC46.332.38.75.4
78位東レ45.132.57.65.1
96位アイカ工業40.523.510.76.3
99位東京応化工業39.518.513.37.7
105位住友化学37.929.88.10.1
112位三菱ガス化学36.820.510.36.0
119位クラレ35.024.08.22.8
125位日本曹達33.717.310.75.8
126位日本酸素HD33.718.312.72.8
127位旭化成33.624.57.21.9
128位トーヨータイヤ33.517.313.92.4
135位住友ゴム工業32.622.56.33.7
142位ADEKA31.817.89.64.5
162位日本パーカライジング27.611.88.07.8
163位三洋化成工業27.613.56.67.5
166位帝人27.230.51.6-4.9
167位日本触媒26.917.06.04.0
178位JSR25.324.30.40.7

25点以上を獲得した化学系メーカーとしては、27社がランクインしていました。

化学系以外を含め、首位は2年連続で信越化学工業。

化学というセクターでも、経営次第では首位を狙えるのかもしれませんね。

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今回は総合化学メーカーと呼ばれる三菱ケミカルG、住友化学、三井化学、加えて旭化成、東ソーの5社を解説します。 事業内容も比較していますので、就活、転職、株式投資のご参考に良ければ最後までご覧ください。

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Youtubeのコミュニティに寄せられたコメントをテーマに取り上げ、化学業界を見通してみる企画です。

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